LANケーブルはカテゴリ6Aで十分、むしろ7以上は買うな
2020/05/24
LANケーブルの選び方みたいな話を他人にすることがあったので、その話です。
家庭用LANケーブルの選び方を理解している人って割と少ないので、LANケーブルの選び方とカテゴリ7やカテゴリ8はやめた方が良い話をします。
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LANケーブルの選び方
早い話がカテゴリ6A UTPを買いましょう。
各カテゴリの規格を表にしました、帯域とかそういうのは一般人が気にしても意味がないので省略。
カテゴリ | 5 | 5e | 6 | 6A | 7 |
---|---|---|---|---|---|
最大通信速度 | 100Mbps | 1Gbps | 1Gbps | 10Gbps | 10Gbps |
シールド | UTP | UTP | UTP | UTP / STP | STP |
コネクタ | RJ-45 | RJ-45 | RJ-45 | RJ-45 | ARJ45 / GG45 / TERA |
買ってよし | 買うな | 買ってよし | 安ければ | 買ってよし | ゴミ |
(誤解されるのも嫌なので補足しておきますが、カテゴリ7や8という規格がゴミなのではなく、市販品のカテゴリ7や8が規格不適合のゴミという意味です)
カテゴリ7Aとか8もありますが、7同様に買ってはいけないゴミなので今回は7とまとめて説明します。
カテゴリ5はやめよう
そもそも売ってないと思いますが、カテゴリ5のケーブルは規格上100Mbpsまでなので買わないようにしましょう。
5e以上が安く手に入る今の時代にわざわざ買う必要はありません。
むしろ家の中に余ってるなら混在防止のために捨てて良いレベル。
1Gbpsなら5eでも十分
1Gbpsまでであればカテゴリ5eのケーブルでも問題ありません。
「帯域に余裕があるからカテゴリ6以上がおすすめ」という意見もあったりしますが、2.5倍の帯域があるからって1Gbpsが2.5Gbpsになったりする訳じゃない。(それどころか、2.5GBASE-Tも5eで行けたりします)
1Gbpsまでしか対応していない機器からはどう頑張っても1Gbpsまでしか出ないんです。なので5eでなんら問題ありません。
5eのケーブルは長距離だとかなり安いので、コストを重視するなら5eで構いません。
例えば同じ15mなら、2019-11-03の時点で5eが530円、6が1267円と倍以上の値段差があります。
Wi-Fiで飛ばすくらいなら5eを長距離用意して有線接続する方が安定します。1階から2階まで引っ張っても1000円未満で済むでしょう。
6は安ければ選ぼう
確かに6に比べると5eは安いのですが、距離が短いと価格差が小さくなるので、5eと6で価格差が小さければ6を選ぶ方が良いです。
逆に言えば価格差が大きいなら無理に6を買う必要はないです。
5eと比べると6ケーブルは十字介在とかのノイズ対策が入っているので、5eよりはノイズに強いです。
ただ、それを言い始めると6と6Aの価格差も大したことないので6Aの方が良くなってくる。
最近だとむしろ6Aの方が安い事もあったりする、5eと6Aの値段に挟まれるとぶっちゃけ選択肢としては微妙です。
おすすめは6A、ただしSTPに注意
規格上の問題がないケーブルで一番性能が高いのはカテゴリ6Aです。
ただし6AはSTPでも規格上OKなので気を付けましょう。STPは一般家庭では使わない方が良いです、6A UTPを買いましょう。
カテゴリ6Aであれば10Gbpsまで出せます。7以上のケーブルにある各種問題点もありません。家庭用のLANケーブルとして最適です。
今はまだ1Gbpsが主流ですがNASとかを中心に10Gbpsが少しずつ増えてきているので、今から新規に購入するなら6A UTPを買いましょう。
市販のカテゴリ7は偽物
ここからが俺の言いたかったこと。
「カテゴリ7」を主張するケーブルが市販されていますが、絶対に買ってはいけません。
カテゴリ7のケーブルではコネクタにARJ45/GG45/TERAという物を使用する必要があります。
ところが市販のカテゴリ7ケーブルはほぼ全てがRJ-45です。RJ-45のカテゴリ7なんて規格は存在しません、要するに規格不適合品です。
じゃあGG45なら良いのか?って、そんなことはありません。
カテゴリ7はSTPケーブルのみが認められています。そして市販されているケーブルはすべてSTPケーブルです。
後述しますが、STPケーブルは一般家庭で使うような代物ではありません。使えるようにするための準備が大変です。適切に使用しないと害悪ですらあります。
カテゴリ7とか銘打ってますが、アレは実質的にカテゴリ6A STPケーブルみたいなものです。
JEITAのPDFに書かれてあることを引用します。
Q3: RJ45プラグ付の「Cat.7」と表記されたパッチコードが販売されておりますが、これについて教えてください。これは、Cat.7の性能はあるのでしょうか。
A3: RJ45プラグではCat.7性能を満足することはできません。よって、これは不適切な表現であり「誤表記」と考えられます。Cat.7性能を満足するプラグは、一般的にTERA、GG45、ARJ45コネクタであり、よって、「Cat.7」と表記された RJ45プラグ付コードは、Cat.7の性能を満足しておりません。
出典: LAN配線技術セミナー2018
(強調は筆者による)
ハッキリと「不適切な表現」「誤表記」と言われちゃってるんです。
多方面に配慮した結果「規格不適合だけど……ケーブルは7準拠で」みたいな息苦しそうな書き方をする人が居ますが、俺はハッキリ書きますよ「市販のカテゴリ7のLANケーブルは規格不適合のゴミ」です。
お金をドブに捨ててるようなもの、買うべきではありません。これはカテゴリ8でRJ-45のケーブルでも同じです。
もう既に買ってしまった人へ
もう既にカテゴリ7以上のケーブルを買ってしまった人、そのケーブルで問題なく動作しているならそれは買い直さなくていいです。
この記事の趣旨はあくまで「カテゴリ7以上は規格不適合な物だよ」「シールドの効果も真偽不明だよ」→「だから不必要に高いだけのLANケーブルを買うのはやめよう」という趣旨です。
5e以上なら何を使っても一緒、10Gbeでも6A UTPで十分。何を使っても一緒なら、無駄に高いだけの規格不適合は買わなくても良いよね。という話です。
「そのケーブル使ったら壊れるから捨てろ!」とか「ちゃんと動作してないから買い直せ!」とか、そういう意味ではないので手持ちにあるカテゴリ7ケーブルを使うのは何ら問題ありません。
お金をもっと大切にしてほしい、他人の言う事(特にネットの記事)を鵜呑みにして買い物をしない方が良い、そういう話です。
ケーブルの種類による違い
同じカテゴリでも種類が色々ありますが、そういう奴の選び方です。
ストレート/クロスはPC間を直結する場合以外は無関係なので省略。どちらでも構いません。
ケーブルの形状
スタンダード(通常)、スリム(細径)、フラット(薄型)などの選択肢がありますが、どれを選んでも速度に大きな差はありません。
(スリムやフラットケーブルは厳密には規格品ではありません。が、意味もなく高い物を買わせようとするカテゴリ7の規格不適合品よりはマシです)
強いていうなら、スリムやフラットはケーブルが細くなってる分だけノイズに弱いのでスタンダードがおすすめです。
ノイズに弱いと言っても、何十メートルも引っ張るとか電子レンジや電源コードの横を通すとかでもない限りは気にしなくていい。
極端に薄いものだと速度が出ない物もありますが、普通はどれでも大丈夫です。
(極端に薄いので100Mbpsまでしか出ない例: ケーブルは薄いけど速度も期待薄!? 窓から引き込めるCAT5eケーブル、サンワサプライ「500-LAN-FLFF」【イニシャルB】 - INTERNET Watch ← これも100Mbpsまでしか出ないなら5eって名前で売ってはいけない気がしますがね……)
単線とヨリ線
LANケーブルには単線とヨリ線という物があります。
細かい説明は長くなるので大雑把に説明すると、LANケーブルの中には8本の銅線(芯線)が入っています。単線やヨリ線というのはその個々の芯線の種類の事です。
単線は文字通り芯線が1本の銅線で出来ています(つまり8本の銅線が入っている)。ヨリ線はその名の通り細かい芯線を何本かまとめて撚った銅線です、これが8本入っています。
単線の方がノイズに強く、ヨリ線の方が柔らかいです。強いていうなら単線がおすすめです。ただ、製品情報ページに記載されていないことが多いので探すのは難しいかも?
どちらも普通に使う分には大差ありません。
ちなみに「ヨリ対線」は関係ありません。これはツイストペアケーブルの事です、LANケーブルはすべてツイストペアケーブルです。
信号の流れる向きが異なる2本のケーブルを撚る事でノイズを打ち消し合うという仕組みです、単線/ヨリ線の芯線を更に2本ずつまとめてヨリ対線にしています。
シールド
LANケーブルにはケーブルの周りにノイズ対策のためのアルミ箔みたいなのを巻き付けた「STP」と、そういう事はしていない「UTP」があります。
「ノイズ対策のためにシールドを追加した」と言うとSTPの方が良さそうに聞こえますが、これは罠です。
STPケーブルを使用する際にはノイズを逃がすためのアースが必要になります。これを怠るとシールドがアンテナになってむしろノイズを拾ったりします。
家庭用ではUTPケーブルを使用しましょう。STPケーブルを買う必要はありません。
そもそも、カテゴリ7ケーブルを売っているサンワサプライが自社のサイト上で無意味だと言っちゃってますからね。
UTPはアンシールディッドツイストペアの略称で、「シールド無し」の意味です。STPはシールディッドツイストペアの意味なのですが、規格上の正式名称ではありません。正式にはFTP(フォイルディッドツイストペア)と呼びます。また、規格の中にはScTPと呼ばれるケーブルが存在します。ScTPは外周だけではなく、それぞれのペアもシールドされており、非常に硬く、取り回しがしにくいケーブルです。UTPとFTPの差ですが、外部からのノイズには双方とも無力です。シールドは外部ノイズではなく、ケーブル自体から輻射されるノイズ抑制に効果があります。特にEMIと呼ばれる低周波数の電磁ノイズ(電力線、モータ、蛍光灯)には、全くと言って良いほど効果が期待できません。
むしろ、外皮のアース部分が伝導体となって、異なる電位(アースがきちんと行われていない機器にたまっている電圧)の機器が接触し、ケーブルの中を流れたり、場合によってはスパークし、逆にノイズを発生することがあります。通常使用にはUTPを用い、外部ノイズの遮断には鉄管などの磁性体(磁石のくっつく物体)で覆うのが一般的で確実な方法です。(強調は筆者による)
「ケーブル自体から輻射されるノイズ抑制に効果があります」とは書いていますが、家庭用のケーブルでは気にするほどの物でもないでしょう。ノイズが気になるならUSB3(2.4Ghz帯と干渉するノイズを放出する)なんて使えなくなりますよ。
ちなみに「じゃあアース取れば良いんだろ」って訳でもないですからね?アースも機能用接地という物が必要です、家庭用の漏電防止などで使われる保安用接地ではダメです。
アースは両端の機器で取る必要がありますし、機器側がアースに対応している必要があります。(ルーター自体にアースが付いていても、STPケーブルに対応できるアースになっているとは限らない)
一般家庭でちゃんとSTPケーブルが使えるようなアースを準備するのは非常に難しい。
カテゴリ7以上はSTPケーブルが必須なので、この時点でカテゴリ7は家庭用には適しておらず非推奨です。
6AはUTPとSTPの両方ともあります。6Aケーブルを買う際にはUTPである事を確認しましょう。
6以下はUTP専用です。逆にSTPケーブルは規格不適合です。
「LANケーブルで速度が変わる」はほぼ嘘
主にカテゴリ7や8を勧めている連中を中心に「LANケーブルを変えたら速くなった!(速くなる)」みたいな投稿がありますが、ほぼ嘘です。適当な事を書くな。
機器側の要求する性能を満たせるならLANケーブルなんか何を使っても一緒です。
LANケーブルで速度が変わるとしたら、以下のどれかです。
- 前のケーブルに問題があった (カテゴリ5を使っていた、劣化していたなど)
- 測定方法がおかしい
- そいつが
アフィカスポンサーのご意向で飯を食ってる - そいつの頭がおかしい
大抵は2番です。測り方おかしい奴が異様に多いので書いておきます。
ネットワーク機器の性能を測る正しいやり方
ネットワーク機器に限らないんですが、PCパーツ関連の記事って呆れかえるくらい適当な方法で測定する奴が居るのでやり方を書きます。
次の1行は絶対禁則事項です、絶対に覚えてください。というかLANケーブルで速度が変わったとか言い出す異常者のほとんどはこれを間違えてます。
「機器の性能を測るために外部のサービスを使うな!」
「外部のサービス」ってのは「回線速度」とかって調べて出てくる色々な速度測定サイトの事です。
ああいうのは回線そのものの速度とか、プロバイダーの性能を測定するための物です。ネットワーク機器の性能を測るための物ではありません。
嘘だと思うならLANケーブル類そのままで昼間と夜中に測定して比べてみればいいです。何もしてないのに速度が大幅に変わりますから。
回線速度測定のサイトって、それくらい不安定な物なんですよ。LANケーブルよりももっと多くの、あらゆる要素に左右されます。ああいうのは目安程度にしかなりません。
カテゴリ5eで昼間に計測して、カテゴリ8で夜中に計測すれば、そりゃカテゴリ8の方が速くなりますよ。もっとも、それはLANケーブルを変えたから速くなったんじゃなくて、夜中で利用者が減ったから速くなっただけですけどね。
これを勘違いして適当な事を書いてる奴がマジで多い。回線速度の測定サイトは大文字で「ネットワーク機器の性能を測定するための物ではありません」って書いておいてほしい。
そういうサービスで測定してる時点でそいつは素人なので、そんな記事やレビューを読んではいけません。間違った情報は有害です。
ネットワーク機器の性能を測りたい場合は、LAN内でiperfなどのソフトウェアを使って測定しましょう。LAN内ってのはお家の中の他のパソコンって意味ね。
正しい方法で一度やってみれば分かります。5eも6Aも8も同じくらいの速度しか出ないって。
ある人がある物事について記事を投稿しているからって、その人がその物事に精通しているとは限らないんですよ。今時ブログなんて誰でも作れるんですから。
世の中には「そもそもPingと回線速度の違い理解してますか?」みたいなレベルの奴が大量に居ます。そういう人でも知った風な顔をして(間違った)情報を発信できるのがインターネットの悪い所です。
おすすめのLANケーブル
「6AのUTP」、とにかくこれを覚えてください。
家電屋でも「6AのUTP」と言いましょう。通販サイトでも「6A UTP」と検索しましょう。
なんだかんだ理屈を捏ねて7とか8とか買わそうとする奴が湧いたりしますが無視して構いません。
そういう奴らは何も分かってない素人なので。
高いケーブルを売ろうとする理由
「LANケーブルなんて6Aで十分」という情報は調べればいくらでも出てきます。じゃあなんで必死で7や8を売ろうとする人が居るのか?
それは広告収入を増やしたいからです。(もちろんそういう意図はなくてただ無知なだけの可能性もありますが、読者に対して有害なのはどちらも同じです)
こうやってLANケーブルのリンクを張るでしょ?
これを読者がクリックしてLANケーブルを購入すると、サイトの運営者に製品の価格のおよそ2%くらいの収益が入るような仕組みになってるんですわ。
もちろんこれ自体は素晴らしい仕組みです。広告を経由しようがしまいが読者の人が実際に支払う金額は同じです、それでサイトの運営者が支援されるなら良い事でしょう。
そこまでは良いんだよ、問題はそこから先。広告収入目当てにいい加減なことを書く奴が居るって事だ。
LANケーブルそのものの売り上げによる広告収入に限りません。「いかがでしたかブログ」を筆頭とする「適当な事でもとりあえず投稿しておいてアクセス数増えればOK」みたいな雑なスタンスのサイトとかもそうです。
(個人的に、ああいう雑なサイトに対する反撃ってのは「知っている人が」「ちゃんとした情報を投稿する」だと思ってるので、俺より詳しい人もっと協力して……)
そもそも、カテゴリ7のLANケーブルという物自体が消費者を騙そうとしているとしか思えませんが、そういうのを自分のサイトで勧める奴らも悪ですよ。
間違った知識で記事を書くとそれが世界に広まっちまうんだよ。間 違 っ た ま ま、な。
(もちろん俺が正しいとは言いませんよ、俺も何か間違えてるかもしれない。でも間違えないように最大限努力と下調べをしています。これをやってない奴、いっぱい居ます。)
あと、大抵はLANケーブルと一緒に「プロバイダーを乗り換えろ」とか書いてるだろ?狙いはそれだよ、ああいう何かを契約する類の広告は下手に物を売るより単価が良いからな。
(俺はアフィカス業界に片足突っ込んでるので分かるんですが、あいつら碌な奴じゃないからな。マジで。金のためなら専門外の事でも平気で書くぞ。投資、クレカ、ISP、レンタルサーバー……この辺は本当の情報を探すほうが難しいくらい)
だから何も分かってない奴らが無責任な事を書き散らすんだよ、資本主義はクソです!
参考
「間違えないように最大限努力と下調べをしています」と書きました、その証拠です。
- RJ-45のCat.7 Lanケーブルは存在しないのに値段が異常な件。 | rencontRe Lab.
- LANケーブルってどれ買えばいいのって話 | 世界0
- 10GbE時代を見据えると家庭内LANケーブルはCat 6?Cat 7?色々調べて買ってみた | TeraDas
- LANケーブル種類・カテゴリーによる通信速度比較(ベンチマーク) | CMAN
- よくある質問 | サンワサプライ株式会社
- LANケーブルの正しい使い方 | 日経 xTECH(クロステック)
- LAN配線技術セミナー2018 | JEITA (PDF)
- とある通信工のつぶやき (PDF)
- TSUKO ニュースレター No.22 (PDF)
7以上はゴミ、6A UTPを買いましょう。それがこの記事で言いたい事です。(終盤は関係ない話をしましたが……)