X570のチップセットとPCIe 4.0のM.2 SSDを冷やしたい話
2019/12/25
X570、どのマザーにもチップセット冷却用のファンが付いていて見るからに熱そう。あとこのファンが少々うるさい。
そこにNVMe SSD、それもPCIe 4.0の物が加わるので発熱がとっても気になる。
半導体的にはどうって事ないのかも知れませんが、精神衛生的に良くないのでいろいろ試してみた。
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X570を冷やしたい(ついでにSSDも)
動機っぽい動機があるわけじゃないんですが、熱いと聞くと冷やしたくなるのが自作PCというもの。食事は温かい方が良いですけど……
X570が熱いとか、NVMe SSDが熱いとか聞くと、そしてそれが横に並んでいるのを見ると無性に冷やしたくなってくる。
まぁ、好奇心の方が強いかも。という訳で色々と試してみました。
検証環境
最初に使用した機材と環境の説明。
機材は以下の通り。
マザー | ASRock X570 Taichi |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 7 3700X |
クーラー | Scythe 忍者 五 |
メモリ | Crucial DDR4-3200 16Gx2 |
GPU | Radeon RX 570 |
SSD | CFD PG3VNF 1TB |
電源 | Corsair RM850x |
OS | Windows 10 Pro (64bit) |
今回特に重要なのはマザーとSSDです。
検証はすべて室温20℃で実施、エアコンで調整して温度計で確認。
今回はこの環境を前提で書きますが、手法自体は他のマザー、それこそIntel製品でも通用すると思います。
サーマルパッドの交換
これは価格ドットコムのレビューで見かけた奴をパクった参考にした。
X570 Taichiはチップセットとヒートシンクがサーマルパッドでくっ付いてる。それを銅版とCPUグリスに変更する。
マザボ表面のヒートシンクとは別に、その下にチップセット用のヒートシンクが居ます。それを挟んでいる裏表2枚のサーマルパッドが対象。
(ブログのデータ検証用に何度も開けたり閉めたりしたせいでサーマルパッドがガタガタです)
ちなみにチップセット用のヒートシンクはバックプレートを固定しているネジの下2つを外せば外れます。歯車のマークがある奴。
使用するものは銅のサーマルパッド(縦横20mm、厚さ1.0mm)、脱落防止用のサーマルパッド(厚さ1.5mm)、CPU用グリスの3つです。
銅のサーマルパッドと普通のサーマルパッドは以下の物を使用。まぁ大きさと厚さが合っていればOKです。
CPUグリスにはMX-4を使用。チップセットにはなんか細かい部品(名前知らない)が付いているので導電性のない物を使う方が安全だと思います。
まず最初にチップセット(裏)側をやりましょう。こちらは一度作業してしまうと恐らくもう二度と開けないと思うので丁寧に作業しましょう。
チップセットにグリスを塗ります。なんか細かい部品があるので塗りすぎないようにしましょう。
で、このまま一旦放置。
銅のサーマルパッドの片面にグリスを塗ります。こっちは多少べったり行っちゃってもOKです。
元々貼ってあったサーマルパッドの跡を参考にヒートシンクにサーマルパッドをペチャっと貼り付けます。
周囲を脱落防止のサーマルパッド(厚さ1.5mm)で囲みましょう。
後は元通りにネジ止めするだけ。チップセットにグリスを塗るのは最後の方が良いかも?
続いて表面、こちらは簡単ですね。
先ほど同様に、銅のサーマルパッドにグリスを塗って乗っけます。
更にグリスを塗って、同じように1.5mm厚のサーマルパッドで脱落防止。
それだけです。簡単ですね。
思ったより冷える!ただしチップセットだけ
「こんなもん眉唾だろ何の意味があるんだよ……」とか内心思ってたんですが、温度を測ってびっくり。冷えてます。
真ん中に挟まってる物が変わるだけで6.8℃も変わるのか……あまりに冷えるので室温とか何度か確認して再テストしたりしましたが測り間違いではなさそう。
最初から貼ってあったサーマルパッドの性能が悪いのか、それともガタガタになっていたからちゃんと機能していなかったのか……
どちらにせよ、銅パッドへの交換は効果ありそうです。ただし、冷えるのは当然ながらチップセットだけです。
あと、SSD交換とかでヒートシンクを取り外すたびにグリスを塗り直す必要があるというデメリットは発生します。そこは妥協しましょう。
強制空冷
これは割と誰でも思いつくかな。チップセットにファンが付いていますが、SSD冷却用のファンも取り付けようみたいな愚直な方法です。
愚直ですが、これが案外難しい。
市販されているファンステイとかでSSDに風を送れるような平行取付が可能な製品がめちゃくちゃ少ない。
そして、仮にそういう製品を見つけたとしてもグラボとかが邪魔になって取り付けが難しい。
今回は長尾製作所のファンステイを利用しましたが、取り付けにかなり苦労しました。
まぁ……頑張りましょう!
サイドパネルが透明じゃなくても良いなら、サイドパネルにファンを取り付け可能なケースを使用するという手もあります。
以前まで使用していたケースはそういうファンの取り付け方が可能でした。
(サイドパネルに穴開けようとか思った人、強化ガラス製のサイドパネルには絶対に穴開けちゃダメだよ)
やっぱり強制空冷は冷える
さすがに強制空冷は冷えます。
SSDの冷却も出来て、チップセットは銅パッドとの重ね掛けで更に冷えます。
温度が下がった分だけチップセットファンの回転数を落として静音化できると思う。
チップセットファンが壊れちゃった人もこの方法で空冷してやれば問題なく使えるはず。
ちなみに、負荷を掛けた際の温度変化は単に数値が下にズレるだけ。
更に検証
冷えました、終わり。で終わっても良いんですが、もう少し気になることがあったので追加で検証。
ちなみにこの検証、チップセットの温度が安定するまで待つ必要があって、それに数時間かかるのでめっちゃ大変です。
回転数と温度
先ほどまでの検証は回転数の設定をX570 Taichiのデフォルト設定でやってました。
ではこれを両方とも「サイレント」設定にしたパターンと、両方とも最大回転にしたパターン
この3パターンでどう温度が変化するか検証してみました。
回転数はこんな感じ。
温度です。
回転数上げてもうるさくなるばかりでそこまで冷えないな、という感じ。
そもそも既に十分冷えているので、静音性を高めるために回転数を落とす方が良いかも。
チップセットファンの窒息配置
X570はGPUをx16に刺すとチップセットファンが窒息するマザーが多いので、それがどれくらい温度に影響するか?
これはマザーのレビューをしたときにもやったんですが、サーマルパッドを交換したのでその影響も込みで再検証。
結果です。ちなみに強制空冷はしていない。
窒息してると多少温度が上がります。ただ、銅パッド交換している分だけ下がっているので初期状態に比べるとマシ。
SSDは熱源が近くに来るので温度が上がります。あくまで予想ですが、これはx8スロット側にGPUを挿していても同じだと思います。
SSDの温度を気にするならGPUとSSDは離した方が良さげ。それか空冷しちゃうか。
ファンステイの取り付け方向
ファンステイの記事でも少し触れているんですが、ファンステイが平行取付できない時の妥協策です。
グラボを冷やす時のように垂直取付したのでも、グラボに当たった風がヒートシンクに向いて抜ける事で多少の冷却効果は期待できます。
無負荷時の温度はほとんど差が出ていません。負荷を掛けた状態だと少し違うかも。
ただ、これはグラボの形状次第なところもある。どうしてもの時の妥協策くらいで考えた方が良いかも、ベストなのは平行取付です。
ケース内エアフローの影響
他の検証はすべてケースに入れていない状態でやっています。ケース次第で効果に差があるのはご了承くださいって奴。
じゃあ、ケースに入れた状態だとどう変わるんだろう?みたいな検証です。ファンステイで冷やさなくてもケース内の他のファンが生み出すエアフローで十分なのでは?という疑問があった。
(ケース内は取り付けの都合からGPUを窒息配置になるx16に接続している)
"ファンなし"だとケース内の方がSSDの温度が低い。これはケースファンによるエアフローの影響だと判断して良いと思う。
チップセットの温度はケース内の方が高いが、これはケース外(非窒息)とケース内(窒息)では厳密には同じ条件ではないから。その辺を加味して考えると"ファンなし"の状況ではケース内の方が冷える。
一方で"ファンあり"だとケース内の方がやや冷却力が落ちている模様。ケース内だとサイドパネルがあるのでファンの風量に影響しているのではないかと予想。
冷やす必要あるかと言われれば微妙
全ての温度をまとめたグラフは以下の通り。
ここまでやっといてこの結論を提示するのもアレなんですが、正直なところ「冷やす必要ある?」と聞かれたら「ない」ですね。
そもそも最初の状態ですでに温度には余裕がある。大抵のSSDはサーマルスロットリングが65℃~75℃くらいの範囲で起きるのですが、SSDのワーストケースで窒息配置の40℃でも余裕ありまくりです。
冷やすデメリットはありませんが、無理して冷やす必要もないかなという感じ。
正直なところ、サーマルパッドの交換は必要なかったかも……なんて気もしてる。
チップセットは多少温度が高くても問題ないので、強制空冷にしてチップセットファンの回転数を下げるか止めるかすれば静かになる、狙うならその辺りかな。
強制空冷であれば(ファンステイの取り付けさえ上手く行けば)、お手軽でそこそこ効果があるので冷やしたい人には試してみてください。